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【70歳まで定年延長】いつから?メリット・デメリットは?定年後の働き方とお金を説明

●70歳まで定年延長、いつから?→まだ決定されたわけではありません。
2021年4月から高年齢者雇用安定法の改正が施行されました。
これにより企業側は社員を70歳まで定年を引き上げるよう努力義務が課されます。
努力義務なため、70歳まで定年延長が決定されたわけではありませんが、次第に70歳まで定年延長や再雇用制度などが広がっていく見通しです。

 

 

こんにちわ!FPまーこ(@maakomoneydiary)です。

今回の記事のテーマは「60歳以降の働き方」です。

定年って60歳から65歳までに伸びたんでしょ?
定年後は全体的に給料が減らされるから、働く意欲がわかないです…
まーこ
まーこ
今年4月から高年齢者雇用安定法が改正され、「70歳まで働ける」環境は整いつつあります。
この改正と並行しながら、再雇用や年金の制度が若干変わりますので、具体例を挙げながらわかりやすく説明したいと思います!
ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

 

はじめに今回の記事の結論をお伝えいたします。

結論

●70歳までの継続雇用制度の導入などを企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正が2021年4月から施行。
●再雇用時の給与が定年時と比べ75%未満に下がったら補填される「高年齢雇用継続給付」は、支給率を15%から10%に縮小され、実質的に収入減が懸念されます。
在職老齢年金の基準額は47万円超に引き上げられ、働く意欲がそがれないよう配慮された結果に。
iDeCoは加入年齢が65歳まで、受給開始年齢が75歳までに延長。50代でも加入しやすくなり、お得感が増した印象。
「人生100年時代」。定年後も長く働き続けることで老後の生活と年金をより豊かにできると考えます。

 

 

1 高年齢者雇用安定法の改正
70歳までの就業が努力義務化

高年齢者雇用安定法が、今年(2021年)4月に改正されます。

この法律ではこれまで、企業側に対して
●「65歳まで定年の引き上げ」
●「65歳までの継続雇用制度の導入」
●「定年の廃止」
のいずれかを選ぶよう義務が課されていました。

2021年4月からは、この「65歳まで」を「70歳まで」引き上げるよう努力義務化されます。

世間では、よく「70年定年法」と言われていますが、今回の改正では、70歳までの定年を義務付けるものではなく、あくまで努力義務となっています。

今回の改正は、少子高齢化と人口減少に対応して経済社会の活力を維持するために、働く意欲のある高年齢者が活躍できるよう環境を整備する目的があります。

そのため今後、会社員の皆さんは、ご自分の意志やその時の体力・気力、ご家庭の環境などによるかと思いますが、「70歳まで働ける」という選択肢が増えた形となり、「人生100年時代」に向けた環境が着々とできつつある印象です。

2021年4月~
高年齢者雇用安定法が改正

●会社側に70歳まで定年を引き上げるよう努力義務を課す
●「人生100年時代」に向けて「70歳まで働ける」環境へ

 

〇高年齢者雇用安定法の現在と改正後の比較

現在(2013年改正~) 改正後(2021年4月~)
①65歳まで定年引上げ(17.2%)
②65歳までの継続雇用制度の導入(約80%)
③定年の廃止(2.7%)
①70歳まで定年引上げ
②70歳までの継続雇用制度の導入
③定年の廃止
④高年齢者が希望したら、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者が希望したら、70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
*①~⑤はいずれも努力義務です。

現在の欄に記載した①~③のカッコ内の%は、実際に取り組んでいる企業の割合を示しています(厚生労働省のHPを参照)。

①定年の引き上げ、③定年の廃止と比較して、②継続雇用制度(再雇用)は、企業側が労働時間や賃金、待遇といった労働条件を柔軟に決めることができ、企業側としては人件費をおさえることができます。

そのため、企業の約80%という大半は、②の継続雇用制度(再雇用)を導入しているという現状です。

改正後も企業の大半は、この②70歳までの継続雇用制度を採用していくものとみられます。

 

2 おさえておきたい3つのポイント
 ①高年齢雇用継続給付
②在職老齢年金
③iDeCo

高年齢者雇用安定法の改正によって「70歳まで働く」環境は整えられつつありますが、これに呼応する形で雇用保険や年金などで制度改正が行われます。

 

おさえておきたいポイント
①高年齢雇用継続給付の縮小(働くシニアにとって×)
②在職老齢年金の基準額が引き上げ(〇)
③iDeCoの加入年齢及び受給開始時期の引き上げ(〇)
現在 改正後 コメント
①高年齢者雇用継続給付
●定年後も働き続ける65歳未満の人の給与が、60歳時点に比べて75%未満に下がった場合、下がった率に応じて給付する制度。
●給付は最大で給与の15%相当。
2025年4月~
●給付は最大10%に縮小。
●改正以降も段階的に縮小・廃止へ。
働くシニアにとって実質的に収入減(=×)
②在職老齢年金
●60~64歳の人で「給与+厚生年金」が28万円超の場合、年金の支給額が減額されます。
2022年4月~
●60~64歳の人で「給与+厚生年金」が47万円超で年金の支給額が減額に。

●65歳以降の人は47万円超と従前と変わりません
働くシニアの勤労意欲がそがれないよう配慮(=〇)
ただし、年金の受給年齢は引き上げられており、対象になる人は限定的。
③iDeCo(個人型確定拠出年金)
加入年齢が59歳まで
●受給開始時期は60~70歳まで
2022年5月~
●加入年齢は65歳まで引き上げ。

●受給開始時期は60~75歳まで拡大。
「空白期間」というデメリットがなくなり、お得感が増した印象(=〇)


それでは①~③を詳しく見ていきましょう。

 

①高年齢者雇用継続給付

「高年齢者雇用継続給付」とは、60歳の定年後に再雇用で働く人が、給与が下がった場合に減った分を補填できるという制度です。

60歳時点の給与と比べて75%未満に下がった場合、下がった率に応じて給付されます。

再雇用時の給与が61%以下に下がった場合の給付率が最大となり、給与の15%相当が給付されます。

ただ上限があって、36万5.114円以上(2021年1月現在)の給与をもらっている人には給付されません。

<具体例>
※1定年時に毎月50万円、再雇用後に毎月35万円の給与に下がった場合
給与の低下率は70%ですから、「75%未満」というこの制度の要件に当てはまるため給付されます。
低下率70%だと、支給率は4.67%(この率はあらかじめ決められています)なため、35万円×4.67%=16.345円が補填されます。
つまりこの人の給与は、35万円+16.345円=36万6.345円となります。

※2定年時に毎月48万円、再雇用後に29万円の給与に下がった場合
 給与の低下率は約60.4%となり、支給率は最大の15%となり、29万円×15%=43.500円が補填されます。
つまりこの人の給与は、29万円+43.500円=33万3.500円となります。

このような制度なのですが、2025年4月以降に改正され、支給率が縮小されます。

最大で15%の支給率が最大10%に下がる予定です。

支給率が引き下げられた背景には、「この制度はもともと時限的な措置で、毎年縮小・廃止が検討されながらも存続してきた」、「65歳までの労働人口の確保に一定の見通しが立った、と政府が判断した」という背景があります。

「働くシニア」にとっては、実質的に収入減となります。

今後の動向については、企業側がシニア層の給与体系を改善させていくのかが注目されます。

②在職老齢年金

60歳以上で厚生年金に加入しながら(=会社員として働きながら)受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」と言います。

「給与+年金」の金額に応じて、年金額は減額あるいは全額支給停止となる制度です。

※正確には、給与のことを「総報酬月額相当額(=その月の標準報酬月額+その月以前の1年間の標準賞与額の合計÷12)」、年金のことを基本月額(特別支給の老齢厚生年金の月額)と言いますが、イメージしやすいように「給与」と「年金」で表現ます。

大まかなイメージで、現在60~64歳の人の「給与+年金」の合計金額が28万円を超えると、超えた給与の半分にあたる金額が年金から減ります。

改正後の2022年4月からは、この基準額となる28万円を引き上げて47万円となります。

「給与+年金」の合計金額が47万円を超えると、超えた給与の半分にあたる額が年金から減るように変わります。

 

現行 改正後
(2022年4月~)
「給与+年金」の合計金額が28万円以下なら、年金は全額支給されます。 「給与+年金」の合計金額が47万円以下なら、年金は全額支給されます。

いま現在、厚生年金の支給開始年齢は、60歳から65歳へ段階的に引き上げられている最中です。

男性なら2025年に、女性なら2030年に65歳支給へ完全に移行することになります。

そのため、男性であれば昭和36年4月2日生まれ、女性であれば昭和41年4月2日生まれよりも若いかれば、この制度改正の対象とはなりません。

 

(3)iDeco(個人型確定拠出年金)

加入年齢が60歳から64歳までに引き上げられました。

※現行制度
例えば55歳でiDeCoを始めた場合
60歳で掛け金の積立は終了
●積み立てた掛け金(+運用益)は63歳から受け取れる
●積立が終了する60歳から、受け取れるようになる63歳までの間は、
①所得控除できない(節税効果がない)
②口座管理料を負担する必要がある
という「空白期間」が生じてしまいました。

※改正後
改正後は64歳まで積立できるため、60~63歳までのこうした「空白期間」は発生せず、節税効果を受けられるため、50歳代でも加入しやすくなったと言えます。

 

iDeCoの制度改正については、本ブログ「iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改正はいつから?3つのポイントを説明」をご覧いただけると嬉しいです。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改正はいつから?3つのポイントを説明iDeCoの制度改正。 ①会社員・公務員の加入年齢が65歳未満に延長(2022年5月から)②受け取れる期間が「60~75歳」に拡大(2022年4月から)③企業型DC(確定拠出年金)加入者のiDeCo加入要件の緩和(2022年10月から) 詳細な注意点を説明していきます。...

 

 

3 人生100年時代に向けて
「定年後も長く働くこと」を考える

「人生100年時代」と言われる中、健康である限り長く働き続けることは、ご自分のこれまでの経験やスキルを活かしたり、社会に参加・貢献意識を高めて生きがいを見つけることができ、多くの人と関わり合って活力のある生活を送るという意味で極めて重要なテーマとなってきています。

一方で、年金という側面においても、会社員として働き続けていけば、厚生年金は70歳まで加入することができます。会社員として長く働き続ける(=厚生年金の加入期間を延ばす)ことで年金額を確実に増やすことができます。

 

長く働き続けるメリット
●活力のある生活を送れる
●無収入の期間が減る
●年金の受給額が増える
●安心の老後に

60歳になった時の、ご自分の勤労意欲や体力・気力、経済状況や家庭環境などによって、第2の人生をどのように歩むかはご自分の意志次第ですが、「定年後も可能な限り長く働き続ける」ことは、老後の生活と年金をより豊かにするためにとても重要だと考えます。

 

高年齢雇用安定法の改正や3つのポイントといった今回の記事が、みなさんの第2の人生を考える上でのきっかけになっていただければ幸いです。

 

最後にポイントをお伝えいたします。

ポイント

●70歳までの継続雇用制度の導入などを企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正が2021年4月から施行。
●再雇用時の給与が定年時と比べ75%未満に下がったら補填する「高年齢雇用継続給付」は、支給率を15%から10%に縮小され、実質的に収入減が懸念されます。
●「給与+年金」が28万円超なら年金が減額となった在職老齢年金は、47万円超に引き上げられ、働く意欲がそがれないよう配慮された結果に。
●iDeCoは、加入年齢が65歳まで、受給開始年齢が75歳までに延長。50代でも加入しやすくなり、お得感が増した印象に。
●「人生100年時代」。定年後も長く働き続けることで老後の生活と年金をより豊かにできると考えます。

 

まーこ
まーこ
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