『資本論』は、労働者が搾取され格差が拡大していくという資本主義の問題点を指摘した予言書です。
こんにちは!まーこ(@maakomoneydiary)です。
今回の記事は、資本主義を知る上でかかせない歴史的名著、カール・マルクスの『資本論』について説明していきます。
☆3秒リーディング
(*3秒で読める30文字程度でこの本の要旨や私の解釈をお届けするコーナー)
『資本論』は、労働者が搾取され格差が拡大していくという資本主義の問題点を指摘した予言書。
カール・マルクスの『資本論」。
マルクスは、①「資本主義は労働者が資本家に労働力を搾取されるシステム」などと資本主義の問題点を暴いた上で、②「資本主義は崩壊し、社会主義に向かう」と主張しました。
こうした考えに基づき、レーニンはロシア革命を実現してソ連を建国しました。
その後も東ドイツやハンガリー、ポーランドなど多くの社会主義国が誕生します。
ですが、ソ連の崩壊やベルリンの壁崩壊と社会主義国が倒れ、東西冷戦で対局の立場にいた資本主義の1人勝ちとなりました。
1 社会主義への移行に関する記述がほとんどない
マルクスは、「資本主義社会が高度に発達していけば、資本家と労働者との間で格差がどんどん拡大していき、工場で組織化された労働者の不満が爆発して資本主義は崩壊し社会主義革命が起きるだろう」と主張しました。
これに対し、レーニンが革命を実現した当時のロシアは、高度に発達した資本主義社会ではなかったのです。
その当時、ロシアはヨーロッパの中でも最も遅れた後進国だったのです。
さらに言えば、マルクスの唱える革命の中心は工場労働者です。
ですけど、ロシア革命の中心的な役割を果たしていたのは農民でした。
また、マルクスは具体的に、その当時ヨーロッパで一番栄えていたイギリスで革命は起きると想定していました。
社会主義に移行する時期 | 革命の中心 | どこで起きる? | |
マルクス | 高度に発達した 資本主義社会 |
工場労働者 | イギリスを想定 |
レーニン | 後進国 | 農民 | ロシアで実現 |
マルクスは、「資本論」で資本主義の批判を徹底的に展開しましたが、いざ社会主義に移行するプロセスについてはあまり展開していませんでした。
そのため、どのように社会主義へと移行していくのかについては、受け取る側に解釈やアレンジする余地が生まれてしまったのです。
なので、マルクスの考えを受けたレーニンが、少し“早とちり”をしてロシア革命を実現したからソ連は倒れてしまったのだ、というのが大方の見方です。
他の社会主義国も同様に、マルクスの考えに対する解釈やアレンジを誤ってしまったから倒れてしまったのだ、という感じで、土台となっているマルクスの考え自体は正しいのだ、という評価なのです。
ただし、そのマルクス自身は、高度に発達した資本主義社会で革命が起きて社会主義に移行すると述べていますが、社会主義に移行した国の全ては、資本主義の発達が要因ではなく戦争や内乱で時の政権が倒されたことによるものです。
さらに現在、日本やアメリカといった資本主義国は、十分に高度に発達した資本主義社会と言えると思いますが、マルクスの想定していた社会主義に移行するといった機運は見られません。
以上を考えると、上記②の「社会主義に向かう」という点については誤りであったと言わざるを得ません。
2 資本主義の本質と問題点を指摘
ですけれど、マルクスは、「資本家と労働者との間で格差が拡大する」「労働者は資本家に搾取される」「金融不安、恐慌が起きる」といった資本主義社会の本質と問題点を見事に言い当てました。
しかも約150年前に。今よりもはるかに資本主義という認識がない時代に。
この点が今でも世界的に影響力を持ち評価されている所以なのです。
具体的に次のように資本主義社会というものを見ていきました。
(1)社会のあらゆる商品を分析
=商品には労働力が込められている
まずマルクスは、「社会の富は巨大な商品の集合体」という認識のもと、社会のあらゆる商品を分析しました。
いま記事を書いている私の目の前にあるパソコンや机、スマホなど、私たちは商品に囲まれて生活しています。
マルクスはこうした商品を1つ1つ分析することで、その先にある資本主義社会が何なのかを見極めようとしたのです。
そして、商品には「使用価値」と「交換価値」という2つの価値があることを解明しました。
使用価値 | 使用する価値 ●洋服=寒さをしのぐ、おしゃれに見せる目的 ●ケーキ=食欲を満たす |
交換価値 | 他のものと交換する価値 ●洋服とケーキなら交換が成立する ●洋服と石なら交換は成立しない |
洋服やケーキといった「交換価値」のある商品には、労働者が生地を切ってデザインしたり、砂糖と卵を混ぜ合わせたり、といった「人間の労働力が込められている」という共通点があります。
つまり、商品の価値(値段)は、その商品に込められた労働力の量で決まるのです。
(2)労働者は搾取されている!
商品の価値は労働力によって決まる。
言い換えると労働力は、新しい価値を生み出すのです。
労働力というのは、労働者の唯一の“商品”とも言えます。
一方で、労働力を買っている(労働者を雇っている)資本家は、労働力を再生産するためだけのお給料しか支払わない。
労働者=熟練した技や創意工夫によって新しい価値のある商品を生み出す
資本家=労働者を購入するためには、再生産するための給料のみだけで良い
結果として、資本家が必要最低限の賃金を支払うだけで、新たな価値のある商品を入手してどんどん儲けていき労働者との格差をどんどん広げていくのです。
さらに工場が機械化されれば、労働者は淘汰され、どんどん厳しい状況に追いやられてしまいます。
つまり、資本主義社会は「資本家が労働者から労働力を搾取する(しぼりとる)システム」なのだという本質を指摘するのです。
3 資本主義の抑止力として(まーこ的見解)
(1)資本主義の1人勝ち=むき出しの資本主義へ
戦後の東西冷戦という状況下、資本主義国と社会主義国のにらみ合いが続いていました。
ピリピリとした緊迫した中で、アメリカやイギリス、日本といった資本主義国は、自分の国が社会主義国にならないよう、労働者が不満をためないような政策を実施していました。
具体的に言えば、医療費を安くしたり生活保護を手厚くしたり、年金制度とかです。
日本であれば、終身雇用制度や年功序列、組合運動のある程度の許容といった感じです。
そうした中でソ連や東ドイツが倒れ、資本主義の1人勝ちの時代が訪れます。
1人勝ちとなった資本主義は、その安心感からか社会主義に対する警戒を解いて労働者を保護するような政策をやめてしまいます。
いわゆる新自由主義(市場原理主義)の台頭です。
派遣労働者など労働者を保護する規制を撤廃したり、国の関与をなくして民営化を進めるといった感じです。
いわゆる“むき出しの資本主義”という形で暴走をし始めました。
そんな中、「派遣切り」と失業者が増えて貧困問題が取り沙汰されたり、一方でリーマンショックが発生しました。
こうした状況が、マルクスが従前から唱えていた「労働者が搾取される」「格差が拡大する」という主張と同じ構造であったため、この『資本論』が注目を浴びたのでした。
その後、「働き方改革」「ワークライフバランス」など、再び労働者の権利保護などが見直されるようになりました。
(2)資本主義という枠内で揺れ動く
そして今回のコロナショック。
解雇や減給などで労働者が大ダメージを受けたほか、格差拡大によって必要な医療を受けられないなどの状況から、資本主義の限界論が叫ばれ、またしてもマルクスの『資本論』が注目を浴びるのです。
そんな中、政府は特別給付金や支援金、GOtoキャンペーンなど、多くの経済政策を打ち出して労働者の保護に回ります。
こうした一連の流れを時系列で表すと、
<社会主義の警戒感から>理性ある資本主義
<1人勝ちの安心感から>むき出しの資本主義
<貧困問題・リーマンショックから>理性ある資本主義
<コロナショックから>理性ある資本主義
といった感じで、資本主義という枠の中で大きく揺れ動いていることがわかります。
マルクスの主張にある「資本主義が崩壊して社会主義に向かう」ことは今後起こる可能性は低いと思います。
おそらく、ずっと資本主義社会が続くことでしょう。
ですけど、私たちは資本主義という経済システムの枠の中で、資本主義がむき出しとなって暴走し始めた時、あるいは経済不況や金融危機、ウイルス危機といった難局が訪れるたびに、マルクスの思想が資本主義の暴走を止める抑止力となって、労働者を守ってくれているように思えてなりません。
マルクスと『資本論』の思想は、約150年経った現在、そしてこの先の未来でもずっと生き続けていき、労働者を見守るような存在なのです。