2020年の税制改正により、「ひとり親控除」が新設され、これまで死別と離婚のひとり親しか所得控除ができませんでしたが、未婚まで広がり、すべてのひとり親家庭が適用されることに(要件あり)。
こんにちわ!まーこ(@maakomoneydiary)です。
今回の記事のテーマは「ひとり親控除と寡婦控除」です。
はじめに結論をお伝えいたします。
●2020年の税制改正によって「ひとり親控除」が新設されたほか、これまでの「寡婦控除」も改正。
●新設された「ひとり親控除」により、これまで死別・離婚だけの対象が、未婚まで広がり、すべてのひとり親家庭が適用されることに(要件あり)。
●男性を対象とした寡夫控除は、ひとり親控除に移行。
●一方で、所得500万円以上のひとり親は適用は受けられなくなった。
1 「ひとり親控除」が新設
「ひとり親控除」とは?
「ひとり親控除」とは、“未婚”のひとり親に対する所得控除で、2020年(令和2年)の年末調整・確定申告から開始されます。
もともと「寡婦(寡夫)控除」という所得控除がありました。
夫と離婚または死別して、その後も再婚していない女性(=寡婦と言います、男性の場合は寡夫)に対して、「1人で子どもを育てたり、家族を養っている人は経済的に厳しい状況なので税制優遇します」というのが「寡婦(寡夫)控除」です。
このような「寡婦(寡夫)控除」は、もともと戦争未亡人に対する福祉が趣旨であったため、「離婚・死別=婚姻関係にあった」ことが前提でした。
最近では、いわゆる未婚のシングルマザーの増加に伴い、婚姻の有無で税制の差をつけることは妥当ではないと判断されたため、「ひとり親控除」が新設されたのです。

(引用:財務省ホームページ)
ひとり親控除の要件と控除額
「ひとり親控除」の適用を受けられる人の要件と控除額は次のとおりです。
その年の12月31日時点で、未婚であることが前提となります。
要件 | ①生計を一にする子がいること 1人暮らしの子に仕送りしている場合でも要件に該当します。 子どもの総所得額が年間48万円以下である必要があります。 ②合計所得金額が500万円以下(年収678万円)であること 経済的に厳しいひとり親を税制優遇するという趣旨なため、高所得者は要件から外れます。 ③事実上婚姻関係にある人がいないこと 再婚していないだけでなく、事実婚をしている人も要件から外れます |
控除額 | 35万円 |
2 寡婦控除の改正
寡婦控除の改正のポイント
「ひとり親控除」が新設されたことに伴い、もともとあった「寡婦(寡夫)控除」は改正されました。
寡婦控除の要件
「寡婦控除」の適用を受けられる人の要件と控除額は次のとおりです。
その年の12月31日時点で、上記の「ひとり親」に該当しないことが前提となります(該当する場合は「ひとり親控除」が適用)。
夫と死別した場合 | ①合計所得金額が500万円以下 ②事実上婚姻関係にある人がいないこと 再婚はもちろん事実婚している人も要件から外れます *生計を一にする子ども・扶養親族の有無は関係ありません。 |
夫と離婚した場合 | ①合計所得金額が500万円以下 ②事実上婚姻関係にある人がいないこと 再婚はもちろん事実婚している人も要件から外れます ③扶養親族を有する 子どもだけに限定されず、老親でも該当します。 |
控除額 | 27万円 |
改正前と改正後の比較は次のとおりです。

(出典:財務省ホームページ)
3 ケーススタディ
説明を進めてきましたが、結局のところ、「ひとり親控除」なのか「寡婦控除」なのか判断がつきにくいと思います。
そのため、具体的なケースで適用の可否を説明いたします。
いずれのケースも再婚または事実婚していないことが前提となります。
状態 | 適用の可否、控除額 |
未婚で子どもがいる女性、男性 (所得が500万円以下) |
〇 「ひとり親控除」が適用され、35万円が所得控除 |
未婚で子どもがいる女性、男性 (所得が500万円以上) |
× 所得500万円以下の要件を満たしていないため。 |
夫と死別し、子どもがいない女性 (所得500万円以下) |
〇 「寡婦控除」が適用され、27万円が所得控除 |
夫と死別し、子どもがいる女性 (所得500万円以下) |
〇 「ひとり親控除」が適用され、35万円が所得控除 |
夫と死別し、扶養親族がいる女性 (所得が500万円以下) |
〇 「寡婦控除」が適用され、27万円が所得控除 |
夫と離婚し、子どもがいる女性 (所得が500万円以下) |
〇 「ひとり親控除」が適用され、35万円が所得控除 |
夫と離婚し、扶養親族がいる女性 (所得が500万円以下) |
〇 「寡婦控除」が適用され、27万円が所得控除 |
妻と離婚し、子どもがいる男性 (所得が500万円以下) |
〇 「ひとり親控除」が適用され、35万円が所得控除 |
妻と離婚し、扶養家族がいる男性 (所得が500万円以下) |
× 「ひとり親控除」は、子どもがいることが要件。 扶養家族は要件から外れます。 |
大まかなイメージとして、子どもがいる「ひとり親」は「ひとり親控除」で、扶養親族がいる又は子どもがいない場合は「寡婦控除」となります。
4 年末調整・確定申告のやり方
「未婚」まで範囲が広がり、控除額も増える可能性があるため、2020年(令和2年)の年末調整・確定申告では、ご自分が適用されるかどうかを確認するようにしましょう。
●年末調整
会社員や公務員で年末調整を行う方は、年末調整でその旨を申告しましょう。
寡婦控除の適用を受ける場合は、「令和2年分(2020年分)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の寡婦欄に記載できます。
一方で、ひとり親控除の適用を受ける場合は、新設されたために記載欄がありません。そのため、「ひとり親」で申告する人は、同申告書の寡婦欄を「ひとり親」に訂正して申告するようにしてください。

(出典:国税庁HP「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係))
*この記事は2021年2月に作成しており、2020年(令和2年)分の年末調整はすでに終了していますが、念のため記載しています。
●確定申告
自営業や個人事業主など確定申告を行う人で、ひとり親か寡婦に該当する場合は、「確定申告書A」の中段の「寡婦、ひとり親控除」の欄を〇で囲み、それぞれの所得控除額を記入してください。
最後にポイントをまとめます。
●2020年の税制改正により、「ひとり親控除」が新設されたほか、これまでの「寡婦控除」が改正された。
●新設された「ひとり親控除」により、これまで死別・離婚のひとり親だけだった対象が、未婚まで広がり、すべてのひとり親家庭が適用されることに(要件あり)。
●男性を対象とした寡夫控除は、ひとり親控除に移行。
●一方で、所得500万円以上の適用は受けられなくなった。