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【2020年確定申告】所得税の改正の主なポイントをわかりやすく説明します

●2020年1月、所得税に関する税制改正が施行されました。
●今回の改正を受けた影響は次のとおりです。
●一般のサラリーマンは特段影響なし。
●収入が850万円以上のサラリーマンは少し負担増。
●自営業・個人事業主は負担減。
●扶養控除もプラスマイナスゼロで変化ありません。

 

 

こんにちわ!まーこ(@maakomoneydiary)です。

今回の記事のテーマは「所得税の改正ポイント」です。

まーこ
まーこ
そろそろ確定申告のシーズンとなりました。そこで、今回行われた所得税改正の主なポイントについて、基本的な所得税のシステムとともに具体例をまじえながら平易な言葉で説明していきます。最後までご覧いただき、何となくイメージを持っていただけたら嬉しいです!

 

はじめに結論をお伝えいたします。

結論

●2020年1月、所得税に関する税制改正が施行されました。
●今回の改正を受けた影響は次のとおりです。
●一般のサラリーマンは特段影響なし。
●収入が850万円以上のサラリーマンは少し負担増。
●自営業・個人事業主は負担減。
●扶養控除もプラスマイナスゼロで変化ありません。

1 収入と所得、給与所得控除と所得控除。
あらためて意味を確認しましょう

2020年の変更点をお伝えする前に、まず収入や所得、給与所得控除、所得控除などといった言葉の認識を確認しましょう。
ある人の所得税を算出するために、「売上」「収入」から必要経費を差し引いて所得を算出します(サラリーマンの必要経費は、一律に給与所得控除というもので処理します)。
次にこの算出した「所得」を、個々人の事情に合わせて配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などといった所得控除でさらに小さくして「課税所得」を出します。
この課税所得に基づいて所得税が決まります。
わかりやすく流れにすると、次のア)→イ)→ウ)という作業になります。

ア) 売上-仕入費や必要経費=所得(自営業・個人事業主)
収入-給与所得控除=所得(サラリーマン・公務員)

イ)所得-所得控除=課税所得

ウ)課税所得×(一定の算式)=所得税

ア)売上-仕入費や必要経費=所得(自営業・個人事業主)
収入-給与所得控除=所得(サラリーマン・公務員)

ラーメン屋を経営するAさん(自営業)のある年、売上が3.000万円になりました。
この売上3.000万円に対して、ラーメンを作るための材料費や店舗の光熱費など、経費が800万円かかった場合、Aさんの所得は3.000-800=2.200万円となります。
一方で、サラリーマン・公務員の方々は、会社や役所からお給料をもらいます。
サラリーマン・公務員1人1人の文房具代やスーツ代などの必要経費を計算して、所得を算出するのは会社や税務署側も事務処理が大変になるので、あらかじめ必要経費を一律に定めて「給与所得控除」という形で自動的に差し引かれています。
ア)においては、自営業とサラリーマンでは、言葉は異なるものの、経費を差し引くという意味では同じ作業を行っていることになります。

自営業者・フリーランス 売上-経費=所得
サラリーマン・公務員 収入-給与所得控除(必要経費)=所得

*言葉が似ていてややこしいのですが、この「給与所得控除」と後に登場する「所得控除」とは全く別物なのでご注意ください。

イ)所得-所得控除=課税所得

収入が、ア)の計算式で必要経費を取り除かれ「所得」になりました。
所得税を算出するためには、イ)の計算式でさらに所得控除で差し引き小さくします。
所得控除というのは、配偶者控除や生命保険料控除など15種類あります。
自営業者の方は、確定申告の際に所得控除を申請して、課税所得を算出します。
その一方でサラリーマン・公務員は、上記ア)の所得に対して、所得税が自動的に天引きされています(これを源泉徴収と言います)。
所得の方が課税所得よりも通常は大きいですから(所得>課税所得)、これに課される所得税も当然大きくなります。
つまり、サラリーマン・公務員は、毎月お給料をもらう際に「多めに所得税を取られている」状態なのです。
この所得税を多く取られている状態を、年末の11月ごろに1人1人がそれぞれ所得控除を会社・役所内の担当者に申請して「多めに支払った所得税の還付を受ける」という調整をするのが「年末調整」となります。
自営業者とサラリーマンでは、大まかな流れが違うということです。

自営業者・フリーランス 必要経費や所得控除を申請して確定申告。 確定申告を必ず行う
サラリーマン・公務員 毎月の給料から所得税は天引き(源泉徴収)。
その多めに支払った所得税を年末調整で還付を受ける
基本的に年末調整で処理し、確定申告の必要なし
*収入2.000万円以上のサラリーマンなど一部で確定申告する必要があります。

年末調整の詳細については、本ブログ「年末調整とは、支出最小化の一大イベントです!」「年末調整とは-。実際の数字で説明いたします」をご覧ください。

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ウ) 課税所得から所得税を算出

このように2段階を経て「課税所得」が算出されました。
この課税所得を、一定の計算式に当てはめて、ようやく所得税が決まります。
一定の計算式とは次のとおりです。
(*ちなみに課税所得の大きさに合わせて税率が高くなることを累進課税と言います)

 課税所得 税率 控除される金額
1.000円~194万9.000円 5% 0円
195万円~329万9.000円 10% 9万7.500円
330万円~694万9.000円 20% 42万7.500円
695万円~899万9.000円 23% 63万6.000円
900万円~1.799万9.000円 33% 153万6.000円
1.800万円~3.999万9.000円 40% 279万6.000円
4.000万円~ 45% 479万6.000円

上記の式に当てはめると、課税所得が500万円、1.000万円、2.000万円なら、所得税はそれぞれ57万2.500円、176万4.000円、520万4.000円ということになります。

2 今回の改正の注目点
●基礎控除=10万円引き上げ
●給与所得控除=10万円引き下げ
●公的年金等控除=10万円引き下げ 

それでは今回2020年の所得税の税制改正における主な変更点です。
●これまで38万円だった基礎控除が10万円引き上げられ原則48万円に
●給与所得控除が10万円引き下げ
●公的年金等控除が10万円引き下げ

が行われました。
この3行だけでは少しイメージしづらいと思いますので、上記ア)~ウ)の流れで見ていきましょう。

(1)基礎控除が原則48万円に

基礎控除とは、所得控除の一種で、職業など関係なく誰でも一律に受けられる控除のことを言います。
これまで基礎控除は38万円だったところ、今回の改正で原則48万円となりました。
上記の流れだと、
 イ)所得-所得控除(ここが10万円増える)=課税所得
 所得控除が10万円大きくなれば、それだけ右側の課税所得も小さくなり、所得税も小さくなりますよね。
そんなお得な話なのです(今のところは…)。
「原則48万円」というのは、高所得者(2.401万円以上)は次のように少し減額されます。
●基礎控除の改正前と改正後

 改正前 改正後(2021年1月~)
所得に関係なく一律38万円 ●2.400万円以下=48万円
●2.401万円~2.450万円=32万円
●2.451万円~2.500万円=16万円
●2.501万円~=0円

(2)給与所得控除が原則10万円の引き下げに

「給与所得控除」というのは、先に述べたようにサラリーマン・公務員の“必要経費”の部分です。
そのため自営業や個人事業主は関係がありません。
上記の流れだと、
ア)収入-給与所得控除(ここが10万円減る)=所得
 給与所得控除が10万円少なくなると、それだけ右側の所得が10万円大きくなり、所得税は大きくなってしまいますよね。
給与所得控除の改正前後を比較すると次のようになります。

給与などの収入金額 改正前 改正後(2021年1月~)
180万円以下 収入金額×40%
(65万円に満たない場合65万円を控除)
収入金額×40%-10万円
(55万円に満たない場合は55万円を控除)
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+120万円 収入金額×10%+110万円
850万円超1.000万円以下 収入金額×10%+120万円 195万円(上限)
1.000万円超 220万円(上限) 195万円(上限)


(3)トータルで見るとプラマイゼロ(サラリーマンの場合)

ア)→イ)の流れの中で、サラリーマン・公務員の方は「10万円引き上げ」と「10万円引き下げ」を行うので、トータルで見るとプラスマイナスゼロになります。
ただし、収入が851万円以上ののサラリーマンは、所得税が若干増えることになります。
自営業や個人事業主は、給与所得控除は関係がなく、基礎控除のみが関係するため、実質的に減税となります。
具体的な例を改正前後の計算式に当てはめて次のように比較しました。
●収入金額が500万円のサラリーマンの場合
・改正前=基礎控除38万円+給与所得控除154万円=192万円
→課税所得は308万円(500万円-192万円)。
・改正後=基礎控除48万円+給与所得控除144万円=192万円
→課税所得は308万円(500万円-192万円)。
改正後も所得税は変わりせん。
●収入金額が851万円のサラリーマンの場合
・改正前=基礎控除38万円+給与所得控除206万円=244万円
→課税所得は607万円(851万円-244万円)。
・改正後=基礎控除48万円+給与所得控除195万円=243万円
→課税所得は608万円(851万円-243万円)。
改正後の方が課税所得1万円分の負担増となります(実質2.000円です)。

(4)公的年金等控除も10万円引き下げ

同様な形で、所得控除の一種である公的年金等控除も10万円引き下げとなります。
60歳以上で、働いて給与を得ながらも年金も得ている人は、基礎控除が10万円引き上げられて減税できるものの、それ以上に給与所得控除と公的年金等控除がともに10万円引き下げられるため、実質的に負担増となります。
給与と年金の両方ある人は、「所得金額調整控除」という制度があり、確定申告することで適用を受けることができます。
その際の控除額は、
所得金額調整控除=年金所得+給与所得-10万円となります。
年金所得と給与所得は、10万円を超えた場合は10万円で計算。
上記の計算式でマイナスの場合は控除額は0円となります。

3 扶養控除の影響は?

(1)そもそも扶養控除とは

扶養控除とは、「子どもやおじいさんおばあさんの面倒を見ていて大変だから税金を控除することで負担を減らしますよ」というもので、所得控除の一種です。
面倒を見ている家族(扶養親族と言います)の範囲は細かく設定されていますが、大まかなイメージだけ伝えると次のようになります。
●16歳以上の子ども
●おじいちゃん・おばあちゃん
●所得が年間38万円以下であること
16歳未満の子どもは、児童手当が支給されるようになったため扶養親族には入りません。

例えば、18歳の高校生の息子さんがアルバイトに精を出して所得が年間38万円以上を稼いだ場合、扶養親族ではなくなります。
すると、親が扶養控除を受けることができなくなり、親の所得税の負担が増えます。
さらにこの息子さんも所得税が課せられるようになります。

(2)今回の改正による扶養控除の影響 「103万円の壁」に変化なし

今回の所得税の改正によって、扶養控除はどのように変化するのでしょうか?
結論として、これまでと変化はありません。
扶養控除については「103万円の壁」というものがあります。
扶養親族の収入が103万円を超えると、「(親が)扶養控除の適用を受けられなくなりますよ」「(扶養親族が)に所得税が発生しますよ」という境界線のようなものです。
先に述べたように基礎控除が10万円引き上がり、給与所得控除が10万円引き下がったので、トータルでプラスマイナスゼロで変化がありません。
●改正前:基礎控除38万円+給与所得控除65万円=103万円
●改正後:基礎控除48万円+給与所得控除55万円=103万円
収入が103万円以下なら、これら控除103万円で課税所得が0円になり、所得税はかかりません。

最後にポイントをまとめます。

ポイント

●●2020年1月、所得税に関する税制改正が施行されました。
●今回の改正を受けた影響は次のとおりです。
●一般のサラリーマンは特段影響なし。
●収入が850万円以上のサラリーマンは負担増。
●自営業・個人事業主は負担減。
●扶養控除もプラスマイナスゼロで変化ありません。

 

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