病気や死亡時の保障機能と解約返戻金という貯蓄機能。
この2つの機能を備える「ドル建て終身保険」は、一見お得なように感じますが、実はコストパフォーマンスが悪いため、加入しない方が無難です。
こんにちわ!FPまーこ(@maakomonrydiary)です。
今回の記事のテーマは「ドル建て終身保険」です。
という方々に向けて作成しました。
具体的なシミュレーションと私の旦那さんの実例でわかりやすく説明していきますね!
最後にオススメの生命保険もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください
1 ドル建て終身保険とは?
「ドル建て」という名称のとおり、日本円ではなくドルをベースに運用していく保険です。
通常の保険は「円建て」なので、わざわざ表記されていませんよね。
加入した契約者は、銀行口座から引き落とされるだけで、ドルを用意する必要は一切なく、通常の保険と全く変わりはありません。
その引き落とされた金額を、保険会社さん側がドルで運用していきます。
なので、自宅に届く明細書がドルで表記されている以外に、契約者側としてはドルで払い込んでいるという感覚はないです。
ドルは日本円よりも利回りが良く、円建てである通常の保険よりも貯蓄率が高いということで注目されています。
また、終身保険ですので、契約者が死亡した際に保険金を受け取ります。
「ドル建て終身保険」をまとめると、次のようになります。
ドル建て終身保険
●日本円よりもはるかに利回りの良いドルで運用(円建てよりお得)
●①病気や死亡に対する保障+②解約または満期時の積立(貯蓄)機能という2 つの働き
2 「ドル建て終身保険」と
「掛け捨て保険+積立NISA」を比較した結果
ここまでの説明では、確かにすごく良い保険に見えます。
では実際に「ドル建て終身保険」の保障機能と貯蓄機能を見ていくと同時に、
同じ保障機能を持つ「掛け捨て保険」と、同じ貯蓄機能を持つ「積立NISA」を並行して行った場合を比較してみましょう。
※つみたてNISAについては、本ブログの関連記事をご覧ください。
(お得な投資制度なため、ぜひ始めましょう)
40歳の男性サラリーマンであるAさんとBさんが、60歳までの20年間、毎月1.5万円の保険料(あるいは積立金)を支払うという条件で比較しました。
①Aさんはドル建て終身保険
●毎月15.000円を20年間払い込み
●20年間の払い込み保険料:34.253ドル
●60歳時の解約返戻金:36.487ドル(106%)
②Bさんは掛け捨て死亡保険と積立NISA
<掛け捨て保険>(*都道府県民共済をモデルにしました)
●毎月2.000円を払い込み
●20年間の払い込み保険料:48万円
●死亡時の受取金:400万円
<積立NISA>
●毎月13.000円を払い込み
●20年間の積み立てた金額:312万円
●20年後に受け取る額:534万(5%の場合)、426万(3%の場合)
AさんとBさんのシミュレーション結果をわかりやすくまとめると、次のようになります。
Aさん | Bさん(掛け捨て保険) | Bさん(積立NISA) | |
毎月支払う額 | 1.5万円 | 2千円 | 1.3万円 |
20年間払い込んだ 金額 |
34.253ドル | 48万円 | 312万円 |
死亡したら 受け取れる金額 |
36.487ドル (=約380万円) |
400万円 | × |
20年後に 受け取れる金額 |
36.487ドル (=約380万円) |
× | 約534万円 (5%を想定) |
AさんとBさん、毎月1.5万円×20年間という負担はまったく同じです。
いかがでしょうか?
保障機能となる契約者が死亡した際の受取金ですが、Aさんが約380万円、Bさんが400万円とBさんの方が20万円上回りました。
貯蓄機能では、Aさんが約380万円を受け取れるのに対して、Bさんは、積立NISAの通常想定される利回り5%で計算した場合534万円と100万円以上と大きく上回りました。
しかも、ドル建て終身保険の解約返戻金には、約20%の税金がかかるのに対して、積立NISAは非課税となり、そのまま全額受け取れます。
結果として、保障と貯蓄という2つの機能を備えたドル建て終身保険よりも、保障と貯蓄の機能を別々で行った方が、コストパフォーマンスが良いと言えます。
●あくまで一例としてご参考にしてください。
今回のシミュレーションでは死亡時の受取金だけを比較しましたが、ガンなどの三大疾病に対する保障や入院時の保障などについては保険の種類によって異なります。
●受取金のドルについては、為替変動の影響を受けます。
今回は1ドル=104円(2020年11月2日現在)で計算しました。
●積立NISAについては、運用利回りが5%を下回るケースも十分考えられます。
●ドル建て終身保険は、「明治安田生命外貨建保険シミュレーション」を利用、積立NISAは「楽天証券積立かんたんシミュレーション」を利用しました。
3 私の旦那さんの加入例を紹介
いま解約したらどうなる?
「ドル建て」にすでに加入している人は?
私の旦那さんが加入している「ドル建て終身保険」をご紹介します。
●26歳から60歳まで月79.39ドルを払い込み。
●34年間の累計払い込み保険料:32.391ドル
●60歳時の解約返戻金:38.686ドル(返戻率119%)
返戻率119%に増えるため、コスパの良い貯蓄商品に見えるかもしれませんが、34年間という期間であらわすと「年利1.0%の金融商品」となり、コスパの悪い金融商品と言わざるを得ません。
「ドル建て終身保険」は、一般に途中解約してしまえば、払い込んだ保険料よりも解約返戻金の方が少ないという元本割れしてしまいます。
現時点(2020年11月2日)で43歳旦那さんは、このドル建て終身保険に加入して17年目に突入し、60歳まであと17年とちょうど折り返し地点にさしかかっています。
●現時点の払い込み保険料:16.195ドル(約169万円)
●現時点の解約返戻金:12.318ドル(約130万円)
という感じで約169万円-約130万=マイナス39万円の元本割れとなります。
そこで、<そのままドル建て終身保険を継続するパターン=A案>と、仮にいま解約した上で<掛け捨て保険と積立投資信託を並行して行うパターン=B案>を行ったらどのような結果になるかシミュレーションしてみました。
「ドル建て終身保険」を このまま継続 |
掛け捨て死亡保険 | 積立投資信託 | |
毎月支払う額 | 79.39ドル | 2.000円 | 6000円 |
60歳までに 払い込む金額 |
32.391ドル | 40万8千円 | 122万4千円 |
死亡したら受け取れる金額 | 48.440ドル | 400万円 | × |
60歳時に受け取れる金額 | 38.686ドル | × | 192万2千円 (年利5%の場合) |
●旦那さんはすでに積立NISAをすで行っているので、今回は積立投資信託とします
●毎月の保険料79.39ドルを8.000円と簡略化して計算
●1ドル=104円として計算(2020年11月2日現在)
保障機能となる契約者が死亡した際の受取金ですが、A案が48.440ドル(=約507万円)で、B案が400万円とA案が100万円以上も上回りました。
貯蓄機能では、A案が38.686ドル(=約405万円)を受け取れるのに対して、B案は、解約返戻金130万円と積立投信の約192万円を合計して322万円となり、これもA案が100万円弱上回る結果となりました。
結果として、A案=このままドル建て終身保険を継続していった方がお得で無難ということになります。
「時すでに遅し」といった感じでしょうか…。
ちなみに、旦那さんがこの「ドル建て終身保険」に加入した経緯ですが、
●私と結婚する前の26歳の時に外資系保険会社に就職した先輩からの勧誘でした。
●「先輩だから断りづらくて」
●「なんか積み立てていけば最終的には損はしないみたいだから」
●「内容の説明は受けて理解したつもりだったけど、すっかり忘れてしまった…」
とのことでした。
皆さんも「ドル建て終身保険」の加入にはご注意ください。
4 まとめ(まーこ的見解)
2のシミュレーションと3の実例をまとめると、
●保障と貯蓄機能を備える「ドル建て終身保険」ですが、保障と貯蓄をそれぞれ別々に行った方がコスパが良い。
●「ドル建て終身保険」のコスパの悪さに気づいて途中解約すると損する場合があるため、加入する際は慎重に検討すること。
●保険は、月単位の支払いだと少額かもしれませんが、積み立てていくと“何十万、何百万円とする金融商品”。
返品のできない高額な商品ととらえ、その商品の内容を最低限は把握する必要があること。
さらに個人的な見解を続けると、保険に関しては、「国民皆保険」という名称のとおり、全ての国民は、ある程度の保障が受けられる状況です。
医療費については保険証を提示すれば3割の自己負担になりますし、もしも主人が亡くなったら、遺族年金として年間約120万円(月約10万円、私たち子ども2人家族の場合)が給付されます。
さらに私の主人は住宅ローンを組んでいます。
住宅ローンの返済期間中に、主人が亡くなったら(先ほどから物騒な話ばかりですみません)、団信(=団体信用保険)によって住宅ローンの返済が免除されます。
こうした点を考えると、もちろん個人的な見解や家族の置かれた状況は人それぞれ異なりますが、「保険は必要最低限の保障だけで良い」、「不安な点を検討した上で、それに見合った内容の保険に加入すれば良い」と私は考えています。
そうした考えに基づくと、生命保険で私が特にオススメしたいのが、今回のシミュレーションの例でも挙げた「都道府県民共済」です。
「都道府県民共済」については、関連記事をぜひご覧ください。
生命保険について正しい選択をしたい方々へ
ぜひ本ブログの関連記事で理解を深めていただき、間違いのない生命保険を選択するようにしてください!
1.「逆にオススメしない、コスパの悪い4つの資産形成」
2.「【ドル建て終身保険】実例とシミュレーションでメリット・デメリットをわかりやすく説明」
3.「【生命保険】掛け捨てと積み立て、どっちを選ぶ?メリット・デメリットを詳しく説明」
4.「【ベストな選択の1つ】シンプルでコスパのよい掛け捨て型生命保険「県民共済」」
5.「【迷ったらこれ】コスパ最強のおすすめ生命保険。生命保険のあり方を考える」
6.「【高額療養費制度】計算式や対象外などをわかりやすく説明【がん保険との関係も】」
7.「いくらもらえる?遺族年金とは?私たち家族でシミュレーション」