年金

【年金制度の改正】いつから?知るべき3つのポイント(在職定時改定、在職老齢年金)

2022年4月から年金制度が改正されます。
在職定時改定、繰り上げ・繰り下げ受給、在職老齢年金が若干変更されますが、全体的に65歳以降働く環境が整い、私たち利用者にとってお得な改正と言えます。

 

年金制度の改正っていつから?
何が変わるの?
今回の改正は、私たちにとって良いこと?それとも悪いこと?

●本記事では、こうした疑問を解消できますよ。

まーこ
まーこ
2020年5月、いわゆる「年金改正法」が成立しました。
全体として私たちにとって得をする内容でした。
多くの改正がある中で、みなさんの老後の生活に直結する3つの改正ポイントをお伝えいたします!
3つのポイントは全て2022年4月から始まります。

★記事の信頼性
FP3級の私が自信を持って、わかりやすく解説していきます

 

 

 

こんにちわ!FPまーこ(@maakomoneydiary)です。

 

今回の記事のテーマは「年金制度の改正」です。

 

 

はじめに結論をお伝えいたします。

結論

①在職定時改定
現行では退職時あるいは70歳時の改定のみ
改正後は「1年ごとに改定」
★保険料を納めた1年ごとに、年金受け取り額がちょっとずつ増えるため、お得な内容。
②繰り上げ受給・繰り下げ受給
繰り上げ受給:現行では1か月で0.5%減額
1か月で0.4%減額
繰り下げ受給:現行では70歳まで繰り下げできる
→75歳まで繰り下げできる
★繰り上げ受給の減額率が下がったのでお得。繰り下げ受給の増額率は変わらないものの、選択肢が広がった点で有利な改正。
③在職老齢年金
現行では60~65歳で働く場合
「月収+年金=28万円以上で年金が減額」
「月収+年金=47万円以上で年金が減額」
★「働きすぎると年金が減る」といった懸念がなくなり、働く意欲がそがれずプラス。

全体として60歳から働く環境が整備された印象で、「人生100年時代」を見すえた改正内容。

 

 

1 在職定時改定

老齢厚生年金は、次のとおり「給料×勤務期間」で算出されます。

 老齢厚生年金
●平均標準報酬額×乗率×加入期間=年金受け取り額
給料と勤務期間の長さに比例して、年金額も増えるという仕組み。
●70歳まで加入できる

現行制度では、65歳以降も会社に勤務する(=厚生年金に加入する)と、退職時または70歳到達時にしか年金額は改定されません(65歳時、退職時、70歳時のみ改定)。

そのため、勤務期間の長さに比例していない期間があるのです。

例えば、65歳以降も働き続けていて、現在67歳の人は、65歳から2年間保険料を納め続けているのに、65歳を基準にした年金額を受け取っています。

この人が68歳に退職した場合、ようやく68歳までの3年間の保険料の支払いが反映されて年金額が改定されるというのが現行制度です。

このような改定は、働く人にとって“払い損”な状態であったため、保険料を納めた期間が反映できるよう年金額が1年ごとに改定されるようになりました。

 

65歳から70歳まで働いた場合、1年後の66歳の時点で、それまで納めた保険料をもとに年金額が改定されます。
その1年後の67歳の時点でも改定され…、というように1年ごとに改定され、年金額がちょっとずつ増えていくイメージです。

納めた保険料がすぐに年金額に反映されるようになるため、勤労意欲がそがされず「65歳以降の働く環境が整った」と言えます。

2 繰り上げ受給・繰り上げ受給の変更

①繰り上げ受給

年金の繰り上げ受給(65歳より早く受け取ること)は次のとおり変更されました。

年金の繰り上げ受給
●現行制度
・1か月早く受け取ると0.5%減額
・60歳で受け取り開始=30%減額
●2022年4月~
・1か月早く受け取ると0.4%減額
・60歳で受け取り開始=24%減額

繰り上げ受給をする人にとっては、単純に年金額の減額をおさえることができるため、大きなメリットと言えます。

繰り上げ受給は、申請をすることによって本来の65歳よりも早く受け取ることができます。

ですが、減額された金額が一生涯続き、途中で変更することはできない点は注意が必要です。

年金の繰り上げ受給
●減額された年金の受け取り額が一生涯続き、変更はできない。
●年金受給者の19.7%が繰り上げ受給している(2017年)。
●制度改正により利用者が今後増えそう
●老齢基礎年金と老齢厚生年金をセットで行う必要がある
*繰り下げ受給は別々で繰り下げ可能。

 

②繰り下げ受給

年金の繰り下げ受給(65歳より遅く受け取ること)は次のとおり変更されました。

年金の繰り下げ受給
●現行制度
・1か月早く受け取ると0.7%増額
・最遅で70歳まで繰り下げできる
・70歳で受け取り開始=42%増額
●2022年4月~
増額率は変わらず0.7%
・最遅で75歳まで繰り下げできる
・75歳で受け取り開始=84%増額

増額する率は変わらないものの、繰り下げ受給を考えている人にとっては75歳までと選択肢が広がったと言えます。

ですが、75歳で年金額が84%増額されるものの、一定額を超えると所得税・住民税を払う必要が生じてきます。

「人生100年時代」と言われ、平均寿命が女性87.45歳、男性81.41歳(2019年、厚労省による)と伸びています。

ただ一方で、健康で自由に過ごせる「健康寿命」は女性74.79歳、男性72.14歳(2016年、厚労省による)となっています。

75歳までの繰り下げ受給は、平均寿命で考えると効果的かもしれませんが、健康寿命を見た場合、「健康で自由に過ごせる時期に年金を使いたい」という人には得策ではないかもしれません。

このあたりは、ご自分の健康状態や経済的な状況を見極めながら決定することになるでしょう。

年金の繰り下げ受給
●増額率は変わらないが75歳まで延長
●75歳まで繰り下げると84%増額。
●65歳の受給額が毎月15万円だと75歳の繰り下げで約27万円を受給。
●この場合だと、月1.6万円ほど課税されるため注意。
●75歳までの繰り下げ受給は、平均寿命で考えると効果的だが、健康寿命で考えると微妙。損益分岐点の見極めは、あくまでご自分の健康状態などを考えて

3 在職老齢年金

60歳以上で働きながら(=厚生年金に加入しながら)、受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」と言います。

「給与+年金」の合計額に応じて、年金額は減額されてしまう制度です。

在職老齢年金
●現行制度
・60~64歳:「給与+年金」が28万円以上で年金が減額
・65歳以上:「給与+年金」が47万円以上で年金が減額
●2022年4月~
・60歳~:給与+年金が47万円以上なら年金が減額
「働きすぎ」や「給料をもらいすぎ」だと年金が減らされる懸念が、減額対象の引き上げ(47万円)によって、緩和される

*「給与+年金」
・給与のことを「総報酬月額相当額」といい、ボーナスや残業手当などを含めたお給料の平均のことをあらわします。
・年金のことを「基本月額」といいます。老齢基礎年金は含まれず、老齢厚生年金だけをあらわします。

仮にAさんが60歳以降も勤務し続け、63歳になった時点で「特別支給の老齢厚生年金」が支給されるようになったケース。

●基本月額(特別支給の老齢厚生年金):
毎月6万円
●給料(総報酬月額相当額):毎月30万円
①現行制度の場合
(6万+30万)-28万×1/2=4万円が減額
年金6万円の受給が2万円に。
②2022年4月以降
(6万+30万)-47万×1/2=0
年金6万円の受給はそのまま。

まとめ

以上、3つのポイントを見てきました。

在職定時改定や在職老齢年金の改正によって、65歳以降の働く環境が整備された印象です。

繰り下げ受給の75歳までの延長を合わせて考えると、「人生100年時代」を見すえた改正と言えます。

老後をむけて「何歳まで働くか」「生活資金をどうするか」といった計画を立てていく上で、ご自分の年金受給額だけでなく、年金制度全体を知っておくことはとても重要です。

年金を知ることで安心の老後をむかえましょう。

年金制度を理解するために、ぜひ本ブログをご活用ください。

 

●年金について
老後資金を考える上で、年金の仕組みを知ることはとても重要です。
1.「【いくらもらえる?】年金の受給額を具体的な数字でわかりやすく説明します。

2.「【コスパ最強】年金が元を取れるか試算したら利回り〇%の貯蓄型生命保険

3.「【受給額をすぐ確認できます】ねんきん定期便の見方をわかりやすく解説

4.「【70歳まで定年延長?】定年後の働き方とお金で知っておきたい3つのポイント

5.「【いくら増える?】年金の繰り下げ受給の計算や手続きなどポイントをご紹介

6.「【自営業・フリーランス向け】年金を増やせる付加年金とは?

7.「【自営業向け】国民年金基金とは?iDeCo(個人型確定拠出年金)との違いも

8.「【もらい忘れ注意】55歳以上の方必見。特別支給の老齢厚生年金とは?

9.「【厚生年金の家族手当】忘れずに申請したい加給年金とは?条件や支給額を確認

10.「【ぜひ参考に!】定年前後のお金を私たち家族でシミュレーションしてみた結果

11.「【人生100年時代に向けて】60歳以降も働いたら、年金はどれくらい増える?

12.「【55才以上の方必見】年金の振替加算とは?その理由や手続きをわかりやすく説明

13.「【年金】将来、減るって本当?マクロ経済スライド、所得代替率とは?

14.「【2022年4月から】年金制度の改正、知っておきたい3つのポイント

15.「【いくらもらえる?】遺族年金とは?私たち家族でシミュレーション

16.「【忙しい人限定】年金の仕組みや受け取り額が一目でわかる一問一答」

【年金】将来、減るって本当?マクロ経済スライド、所得代替率とは?「人口オーナス期」に入った日本の年金制度が賦課方式で運営されていることから、将来的に年金の受け取り額が減少するのは確実。 具体的に5年後に約5千円、20~30年後に約4万円減少する見通し。 だが、「年金額が減るから加入しない」などの過度な心配や反応は不要。 詳細は記事本文をご覧ください。...

 

 

最後にポイントをまとめます。

ポイント

●在職定時改定が導入され、納める保険料に応じて1年ごとに年金額が増える
●繰り上げ受給は1か月0.5%減額から0.4%減額に
●繰り下げ受給は75歳まで可能に
●在職老齢年金は、60~64歳時の減額対象である「給料+年金=28万円以上」が「給料+年金=47万円以上」に。「働きすぎると年金が減る」という懸念がなくなる。
●3つのポイント全体として、「人生100年時代」を見すえて60歳からの働く環境が整備された様相。

 

まーこ
まーこ
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